有料老人ホームと聞くと、世間でよく言われる「介護の3K」を思い浮かべませんか?
介護の3Kとは、「きつい」、「汚い」、「危険」が挙げられます。
老人ホームの主な仕事内容は、起床~就寝までの全ての生活のサポートです。
もちろん、排泄や入浴、余暇の娯楽についても業務の一環です。
それだけでは、ピンとこないという方もいらっしゃると思うので、有料老人ホームでの仕事がどのようなものか、9年間、正社員として有料老人ホームで勤務をし、働きながら介護福祉士実務者研修を取得した私が紹介していきます。
有料老人ホームの仕事内容
・起床介助
起床の声かけ、排泄・着替えの手伝い、居室からフロアまでの誘導、洗面介助、濯物回収
・食事介助
食事の声かけ、お茶・おしぼりの準備、配膳、食事・水分の摂取介助、下膳
・服薬介助
日付・氏名の確認(他の職員と2人以上での確認を行う)、
服薬前にご本人様の前で間違いがないか指さししながら日付・氏名の読みあげを行う、
服薬介助、介助後は口腔内・周囲に薬がないかを確認する
・口腔・排泄介助
歯磨き・トイレ(又は、おむつ交換)の手伝い
・余暇の娯楽
レクリエーション(おりがみ、壁画作成、塗り絵、囲碁、将棋、トランプ、歌を歌う、体操等)
・入浴介助
着替えの準備、衣類の着脱・洗身・洗髪・洗顔の手伝い、軟膏塗布、洗濯
浴室の掃除、シャンプー類の補充
・就寝介助
パジャマへの更衣の手伝い、ベッドへの移動、温度の調節
・その他
バイタルチェック、ご入居者様の話の傾聴、個人記録の記入、事故の対応
病院への受診・外出イベントの付き添い…等
有料老人ホームの仕事できついと思うところ
24時間、人手が必要
ご入居者様の住んでいる家なので、常に職員が必要です。
シフト制のため、勤務開始時間もバラバラで、早朝からの勤務、遅い時間までの勤務、夜通しの勤務のため、仕事に行くだけでも身体的に負担がかかります。
また、人対人の仕事なので、仕事の量が日によって大きく変わることが多いです。
チームでの仕事なので、上手く立ち回る力が必要
その日に一緒に働くメンバーによって、雰囲気、力量、仕事のスピード等、全てが違います。
また、指示を出したい人、指示を待っている人がいるので、自分がどういう立ち位置で1日仕事をこなしていくのかを、メンバーを見て、考える必要があります。
指示を出す場合は誰がどこまで、何をこなせるかを把握しておく必要があります。
死を間近で見る可能性がある
ご入居者様の中には、病院ではなく、施設で亡くなる方もいらっしゃいます。
ご家族の方が現状を理解されていても、ご家族に見届けられながら亡くなることの出来る方は意外と多くないです。
お仕事の都合や時間が深夜帯だったりすると、どうしても駆けつけられないこともあります。
その場合、ご家族様に一報いれることになりますが、大体の方がお子様に当たる方が緊急連絡先になっているので、大切な親の「死」の連絡をする必要が出てきます。
身内の方を亡くした方へ対応する際、発言1つ1つにとても慎重になります。
また、どれだけ仕事に真面目に取り組んでいても、ご入居者様に対して、「生きているうちにもっとしてあげられたことがあったのではないか?」と思ってしまうことがあります。
有料老人ホームで働いていると必ず死に直面することがありますが、その際に「自分には合わない」と感じてしまう職員が多く、離職に繋がる程、精神的に参ってしまうようです。
私も初めてご入居者様の死に直面した時に、同じことを思い、なぜそう感じたのか考えると、「人の人生を預けてもらい、感謝されるほどの仕事が出来ていないから、自信が持てないんだ」という答えが出ました。
自信が持てない中での仕事程、辛いものはないですよね。
意外と人事異動が多い
社員は異動の可能性があると事前に説明は受けているが、異動日の1週間前に突然異動の話をされることもあります。
例えば、車で通勤していれば、駐車場の手配、電車・バス通勤であれば、早番の勤務時間に間に合うか始発の時間を調べる等、早急にやらなければいけないことが増えます。
仕方がないにしても、忙しい勤務時間内に出来る訳もなく、結局は勤務時間外で時間を使って、やることになります。
当然、そんなことでは、給料は発生しません。
異動するとなると、異動前の施設に挨拶代わりに菓子折りを渡すことになり、出費も増えます。
異動先の施設でも1から仕事を覚えなおさないといけません。
同じ会社とはいえ、ルールは場所・人によって違います。
必ず、「異動したら新人と思え」と先輩方から言われますが、本当にその通りでした。
有料老人ホームで働いて良かったと思うところ
職員が優しい
人間の命を預かる現場なので、人に寄り添える職員が多いです。
特に、私は有料老人ホームで働いている期間で、妊娠・出産・育児を経験しているので、何度も一緒に働く職員の言葉や行動に救われたことがあります。
子供がいると、突然の子供の体調不良による欠勤、保育園からの電話での早退等、予想外の出来事も少なくないです。
そんな時に、文句ひとつ言わず、「大丈夫だよ」と声をかけてもらえると、自分も優しい気持ちを持って人に接しようと思うことが出来ます。
人生の先輩の話を聞くことが出来る
私が勤めていた施設では、80~100歳のご入居者様が多く、戦争経験者や孫やひ孫が大勢いる方、長年、仕事をされていた方も沢山いらっしゃいました。
中には、ご自身で会社を立ち上げたり、誰もが知っている会社の責任者だったりという方もおり、自分の短い人生の中では絶対に経験したことが無いであろうことを経験されている方のお話しを直接聞くことが出来ます。
皆さん、「大変だった」と思い出話をしてくださいますが、必ず「良い経験だった」と笑っています。
人間が人生の試練を乗り越えた時の笑顔はとても穏やかで良いものです。自分も老後は優しく穏やかになりたいものです。
相手の立場になって考える力が身に着く
私が新人に仕事を教える時に必ず伝えていることがひとつあります。
「自分がやられて嫌なことは、絶対にしないでね」と、ご入居者様に会う前に説明しています。
沢山の人と関わると、大事なことも忘れてしまうことがあります。なので、絶対に覚えておいてもらいたいことをひとつ、1番最初に伝えています。
仕事なので、当然お金を頂くことになります。自分が嫌なことをされた時に、お金を払いたいとは思わないですよね。
相手のことを考え、相手の為に動ける人間になるよう努力しなければ、人と接する仕事のプロにはなれません。
また、ご入居者様の中には、認知証や寝たきりの方もおり、会話や意思の疎通が難しいこともあります。
そのような方とは、ご家族の方の協力を得ながら、その方にとって1番良いとご家族に思ってもらえる介護を見つけ出す必要があります。
介護の仕事は、ご入居者様のサポートなので、自分以外の人の立場にたって考える機会がとても多いので、長く仕事を続けていると、自然と身についてきます。
まとめ
介護の仕事は身体的にも、精神的にも負担が大きく、色々なことに気を遣うことも多いです。
目の届く、住み慣れた家で1人を見るのとは訳が違います。
お金をもらい、沢山のご入居者様を見なければいけません。
当然、その対価を頂くので、求められる介護の質も高くなります。
どれだけ真面目に務めていても、人が相手の仕事で全てが自分の思うように仕事が進むことは1日もありません。
人は思い通りにいかない時、多大なストレスを受けると聞きますが、本当にその通りでした。
ただ、嫌なことだけではなく、成長するために必要な貴重な経験を他の仕事よりも多くすることが出来るので、そういった面白みがあり、長年続けることが出来ました。
何より、人の笑顔を間近でみられることはなにより励みになります。
正直、有料老人ホームでの仕事はきついけれど、それよりも「この仕事を続けたい」と思える何かを見つけることが大切と言えるでしょう。
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