「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われる看護師ですが、昨今の高齢化社会に伴い医療業界の需要も増えています。就職に困ることもなく、安定した収入が得られます職種の一つです。
看護師と一口に言っても色んな就職先・配属先がありますが中でも一番多い求人は病棟看護師です。
病棟勤務となると、看護師業務だけではなくおむつ交換などの介護業務、更に夜勤もあるので安定した収入とは裏腹に「やっぱりきついのかな?」と感じる人も多いと思います。
今回は新卒から6年間病棟勤務をした私が、実際のところ病棟看護師はきつい仕事なのか赤裸々に紹介していきたいと思います。
病棟看護師の仕事はきついの?楽なの?
結論から言うと楽ではありません。
言い換えると看護師という仕事が人の命を預かっている責任感のある内容なので、楽な仕事と思ってはいけないというのが正直なところです。
そもそも看護師の仕事は医療行為だけだはなく様々な種類の業務が多くあります。得意不得意もあるので、きついと思う部分は人それぞれです。
では、具体的にどのような部分を「きつい」と感じたのか紹介していきます。
病棟看護師の仕事がきついと思うところ
先ほども言った通り、膨大な種類の看護業務があるのできついと感じる部分は人それぞれです。
同僚と「この仕事がきつくて」と話をしても「私はこっちの仕事のがいやなんだ」と意見がわかれることもしばしば。
次にあげるものは、私が勤務していた時にきついと思ったところです。
命を預かる責任が重い
外来看護師や訪問看護師と違って、病棟看護師は患者さんが治療のために住む場所を強制的に病院へ移して過ごす場所となります。
現在進行形で変化していく病状に毎日対応していくことが基本となるため、患者さんのわずかな変化も見逃せない仕事です。
また人の生死に最前線で関わる仕事なので、精神的にきつくなる看護師さんも非常に多いです。
特に患者さんの病態が急変してしまったときは、勤務十何年のベテラン看護師さんでさえ焦ってしまいます。
自分たちの行動で患者さんの運命が大きく変わるかもしれないと思うと、責任がとても重いですよね。
介護業務がきつい
病棟看護師の業務内容は、点滴や採血など医療処置だけではありません。
患者さんの身の回りのお世話をすることも看護師業務に含まれるので、おむつ交換や着替え、入浴介助、食事介助なども行います。
患者さんによっては自分で身動きが取れない方もいらっしゃるので、二人がかりでおむつ交換をしたり、自力でトイレへ行けない方には患者さんを抱えて車いすに乗せてあげたりと単純な体力仕事も多いです。
職員が少ない日の勤務なんかは病棟内を走り回る勢いで仕事をするので、帰ってくる頃にはヘトヘトになり自宅で必要最低限のことしかできないなんてこともあります。
認知症患者さんの対応が大変
病院へ入院される患者さんの大半は高齢者の方が多いです。
高齢者の方が病院という閉ざされた環境で過ごすと、認知症症状が出てしまうということも珍しくありません。
基本的には認知症患者さんの対応はそこまで大変ではないのですが、中には「医師から行動制限をかけられている患者さん」や「慣れない環境で暴力的になっている患者さん」もいらっしゃいます。
医師から行動制限をかけられている患者さんは、極端に言うと「ベッドから降りないでください」や「移動するときは車いすを使ってください」などの制限です。
当然ですがこれらの制限はもちろん意地悪なのではなく、患者さんの病状や身体をしっかりと考えての判断です。
ですが認知症の患者さんはそこを理解できず、動き出してしまったりはたまた怒り出してしまったりします。
慣れない環境で暴力的になっている患者さんにも通じることですが、認知症患者さんのなかには攻撃的な性格に変化してしまう方もいらっしゃいます。
1分おき、数秒おきに動き出そうとする患者さんに何十回も同じ説明を繰り返したり、普段言われないような暴言を言われたりと、仕方のないことだとわかってはいても傷ついたりしてしまうこともあります。
そういう出来事の積み重ねでいつしかきついと思うようになったこともあります。
夜勤で生活リズムが乱れて体調を崩しやすくなった
私が急性期病棟で働いていた時は、夜勤を月に6~7回やっていました。
夜勤をやると、基本給とは別に夜勤手当が入るので毎月もらえる給料が大幅に増えます。
また、夜勤の次の日は休みになるので平日休みを利用して遊びに行けたりと「いいことづくしじゃん」なんて思っていました。
そのため、最初の頃は特にきついと感じていなかったのですが、経験年数を重ねるごとに夜勤の中でもリーダー枠を任されるなど、徐々に仕事量が増えていきました。
また、夜勤と日勤が入り混じったシフトになるため身体が追い付かず、夜勤が終わり家に帰ってきてもなかなか眠れなくなったり、朝早くから起きて日勤した日でもなぜか眠れず朝方になって眠りについたりと生活リズムが大幅に乱れていきました。
そんな生活がしばらく続くと、体調を崩すようになってしまったのです。
風邪をひきやすくなり、酷いときは一か月のうちに何度も発熱を繰り返して仕事を休むことがありました。
病棟勤務は患者さんと毎日関わる仕事であるため、患者さんが無事退院するとき「治療に向けてのサポートを担うことができた」という大きな達成感を得ることができるとてもやりがいのある仕事です。
しかし、上記にあげたように業務内容が激務なのもあり、身体的だけではなく精神的にもきつい場面が多いのも事実です。
病棟看護師の仕事がきつかった体験談
夜勤というのは日中と違い勤務時間が長く、業務内容もある程度ルーティン化されているので勤務人数が少ない状態勤務をします。(大体2~3人)
私が勤務していた病院は3人で50人の患者さんを看るので、大体一人当たり16~17人程担当することになります。
夜になると認知症の患者さんは、不安な思いが増長され落ち着かなくなることが多いです。
点滴をしている患者さんも多いので、決められた時間に点滴を交換しに行ったり、認知症の患者さんが自分で点滴の針を抜くことがないようにしっかりと管理をしなければいけなくなります。
ではここで想像してみてください。
自分以外の夜勤メンバーは点滴の交換や薬の投与など絶対に外せない業務をしに行きました。ナースステーションで一人待機していたあなたですが、なんと同時にナースコールが3つなります。
1人はナースステーション近くの部屋にいる認知症の患者Aさん。Aさんは足が骨折しているので「1人でベッドから降りちゃだめです」という制限を先生に言われていました。
しかしその日の昼間、看護師がナースコールに出るのが遅くなった結果1人で歩いてトイレまで行こうとし、骨折しているため上手く歩けずトイレの前で転倒されていたことがあります。
もう1人はナースステーションから少し離れた部屋にいる高齢患者さんのBさん。Bさんは受け答えに少しズレがあり周囲からは「軽い認知症」という認識をされている方です。
その方も先生から「1人でベッドから降りてはだめ」という制限をかけられていますが、今まで1人で動いたことはなくむしろ「看護師さんが来るまで待っています」と口癖のように言ってくれる、理解のある方です。
もう1人はその日の昼間手術をした30代のCさん。Cさんの容態は安定していますが、手術をしたということもありなにか痛みが出てきた可能性や看護師にお手伝いをしてもらいたいことが出てきた可能性があるので、すぐ対応してあげたい患者さんでもあります。
さて、自分しか対応できる人間がいなかったらどう動きますか?なお夜間なのでナースコールだけで受け答えするのは他の患者さんを起こしてしまう可能性があるので、なるべく直接お部屋に行ってお伺いをするのが原則です。
当時の私はまず、要注意人物のAさんの所に行きました。
Aさんはトイレへ行きたいとのことだったので、車いすに乗っていただきました。
そのまま車いすに乗ったAさんを押してBさんの部屋に行きます。
Bさんへ用件をお伺いすると「飲み物を買ってきてほしい」とのことでしたので10分後には必ず戻ってくることを伝え、再びAさんと一緒に移動しCさんの部屋近くのトイレへご案内しました。
Aさんがトイレへ行っている最中に大急ぎでCさんの所へ行きお伺いすると「手術したところの傷が痛いので薬を使いたい」と苦しそうにお話ししています。
ナースステーションに戻って薬を準備することを伝え部屋を出た後、Aさんの様子を見に行くとトイレを終わらせ自分で動きそうになっていたので、はたまた大急ぎで車いすへ移動するお手伝いをし、Aさんの部屋に戻りベッドで横になってもらいました。
そこからナースステーションへ戻ってCさんの薬を準備しCさんに痛み止めを使います。
Cさんが痛み止めを使いたいと言ってから、薬を使うまでの時間は3分ほどでした。
一息ついたのでBさんの元に戻り、飲み物を買うお手伝いをしようと思いお部屋に行くとBさんが部屋内で転倒されていました。
上記の内容は一例にしか過ぎませんが、夜勤中はこのようなことが何十回、何百回と起こります。
危険度や優先順位をすぐさま自分の中で整理して行動しても、予測できない出来事が起こるのが病棟看護師の仕事です。
必要な業務をこなしながらイレギュラーな出来事にも対応するというマルチタスクをやり続けなければいけません。
病棟看護師の仕事がきついときの対処法
上司に相談して環境を変えてもらいましょう。
上記にある内容は、勤務形態や配属先が変わると環境もガラッと変わる可能性があります。
例えば、夜勤が大変で身体的にきつくなっているときは夜勤の回数を減らしたり日勤常勤になるだけで、生活リズムが整うので身体の調子が変わっていきます。
私も夜勤で体調を崩しやすくなってしまったときは、上司と相談し勤務を日勤だけにしてもらいました。
すると一か月もたてば身体の調子が戻っていき、出勤前の朝にウォーキングやランニングができるぐらい体力的にも気持ち的にも余裕が生まれました。
休みの日もほとんど寝てることしかできなかったのが、お出かけを楽しんだり趣味の時間に費やせたりと充実した時間を過ごしました。
それから数か月後くらいに再び夜勤をやりはじめましたが、やりすぎないように回数を制限しながら勤務することで自分に合った働き方を見つけることができました。
業務自体が激務できついときも、上司に相談して違う病棟へ配属先を変えてもらったりすることで改善することがあります。
病棟ごとに業務内容や患者さんの層も変わってくるので、同じ院内でも働きやすさがガラッと変わることもあります。
総合病院などで複数の病棟があるときは自分に合った病棟に異動するのも一つの手です。
まとめ
看護師の仕事は決して楽ではなく、きついと感じる部分も多くあります。
多忙な業務内容や、命を預かる仕事という責任感、生活リズムが崩れやすい勤務形態などの状況が重なることで、きつくなってしまいます。
今回は6年間病棟勤務していた私が、どんな部分がきついと感じたのか赤裸々に紹介しました。
これから病棟看護師をしたい人はまず、勤務したい病院について調べましょう。
どのような科に力を入れている病棟なのか、院内の病棟の数や一病棟における患者数、二交代制なのか三交代制なのかなど事前に調べることで自分に合った働き方ができる病院、病棟を探すことができると思います。
病棟看護師というのは今の日本におけるなくてはならない職種です。だからこそ看護師が無理なく勤務ができるようにしましょう。
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